管理監督者とは、労働条件の決定その他の労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいい、職務の内容や職責の重要性のために厳格な労働時間管理になじまず、役職手当の支給など、その地位にふさわしい処遇がなされていると考えられていることから、労働時間規制の適用が除外される。

 管理監督者に該当するか否かは、企業内の資格や職位の名称にとらわれることなく判断されるため、単に「管理職」というだけではその要件を満たしたことにはならない。具体的には、①職務内容や責任と権限(人事上の決定権など経営者と一体的な立場にある職責を担っているか否か)、②勤務態様(労働時間管理の有無や程度、出勤・退社についての自由度など)、③待遇(一般労働者と比較して優遇されているなど)によって、客観的に判断されることになる。

 管理監督者に関する裁判例について、管理監督者に該当しないとされたケースと該当するとされたケースをいくつかご紹介いたします。

○管理監督者に該当しないとされたケース

・一度も役員会に出席することがなく、他の従業員と同じような労働時間管理・賃金体系での賃金だった「取締役工場長」(大阪地裁昭和40年5月22日)

・アルバイトの採用権限等はあるものの、社員の採用等には決定権が無く、また、出勤時間についても完全な自由が無く、賃金も他の従業員と大きな差がなかった「ファーストフード店店長」(東京地裁平成20年1月28日)。

○管理監督者に該当するとされたケース

・従業員募集についての業務計画の立案・実施権限があり、役員の採用決定手続きにも意見を具申することができる立場で、かつ、勤務時間についての自由裁量があり、残業手当の代わりに責任手当・特別調整手当が支給されていた「人事課長」(大阪地裁昭和62年3月31日)。

・30名以上の部下を統括する立場にあり、支店の経営方針を決定し、係長以下の人事についての裁量権があった。また、労働時間の管理対象外で、賃金についても、他の店長クラスよりも格段に高かった「支店長」(大阪地裁平成20年2月8日)。