賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和5年)
厚生労働省は、令和6年8月2日、令和5年に賃金不払が疑われる事業場に対して労働基準監督署が実施した監督指導(立入調査)の結果を取りまとめ公表しました。
1.令和5年に全国の労働基準監督署で取り扱った賃金不払事案の件数、対象労働者数及び金額は以下のとおりです。
(1)件 数 21,349件(前年比818件増)
(2)対象労働者数 181,903人(前年比2,260人増)
(3)金 額 101億9,353万円(前年比19億2,963万円減)
2.労働基準監督署が取り扱った賃金不払事案のうち、令和5年中に、労働基準監督署の指導により使用者が賃金を支払、解決されたものの状況は以下のとおりです。
(1)件 数 20,845件(97.6%)
(2)対象労働者数 174,809人(96.1%)
(3)金 額 92億7,506万円(91%)
※1 令和5年中に解決せず、事案が翌年に繰り越しになったものも含む。
※2 倒産、事業主の行方不明により賃金が支払われなかったものも含む。
※3 不払賃金額の一部のみを支払ったものも含む。
今回の調査結果の中では、監督指導による是正事例も紹介されており、労働時間管理を見直す際の参考になると思います。
【事例】
時間外労働を行っているにもかかわらず36協定届が未届であるとの情報を受け、労働基準監督署が立入調査を実施したところ以下の実態が認められた。
①月60時間を超える時間外労働に対して、法定の割増率(50%以上)を下回る割増率で計算されていた。
②割増賃金の基礎として算入すべき賃金(役職手当等)を除外して割増賃金が計算されていた。
③一部の労働者に対して固定残業代として、月40時間分の割増賃金が支払われていたが、40時間を超過した時間については割増賃金が支払われていなかった。
【労働基準監督署の指導】
①月60時間を超える時間外労働に対して、法定の割増率(50%以上)で計算して支払うこと。
②割増賃金の基礎として算入しなければならない賃金を全て足し上げた上で、割増賃金を再計算し、実際の支払額との差額を支払うこと。
③月40時間を超える時間外労働に対する割増賃金を計算し、固定残業代として支払った金額との差額を支払うこと。
【その後の事業場の対応】
■過去に遡って正しい単価で割増賃金を再計算し、不足が生じていた労働者に対して、追加で差額の割増賃金を支払った。
上記事例において、会社は過去に遡って正しい単価で割増計算を再計算し、追加で差額の割増賃金を支払いました。今回のように「割増率が不足している」、「割増賃金の基礎とすべき賃金が不足している」、「固定残業代超過分の支払が未払いとなっている」などは、給与計算に関わる非常に大切な部分であると共に、法改正情報も反映させていく必要があるので、各従業員の雇用契約内容の再確認、給与計算ソフトの設定の再確認などを行い、日々メンテナンスを行っていくことが大切ですね。